【書評】荒くれ漁師をたばねる力[著]坪内知佳

うみねこ

 

荒くれ漁師をたばねる力 ド素人だった24歳の専業主婦が業界に革命」という本を読んだ。

 

ひょんなことから漁師たちの仕事を手伝うことになった、うら若き女性が、日本の水産の未来を変えるという大きなビジョンを描き、さまざまな困難に挑戦していくという物語だ。著者の坪内知佳さんは、この物語の主人公である。

 

今でこそ、坪内さんは日本の水産業のあらたな担い手としてメディアの注目をあつめているが、事業を開始した当初は、魚に関してはアジとサバの区別もつかないほどのズブの素人だった。

 

そんな彼女が、どのようにして荒くれ漁師たちをまとめあげ、業界に変革を起こしていったのか…。本のなかで、その様子を彼女自身の視点で振り返っている。

 

ストーリーは笑いあり・涙あり・感動ありの小説のようで、単純に読み物としておもしろい。かといっておもしろいだけでなく、ビジネスをまなべる要素がぎっしりとつまっていて、ビジネス書としての読みごたえもしっかりある。

 

ぼくは、この本を、ひとりの起業家の物語として読んだ。

 

若干24歳(当時)の女性が、余命半年宣言から大学中退、離婚、シングルマザーでの子育てなど、数々の困難を経験しながら、体当たりで壁にぶつかり、壁をこわしていく物語は、読み終えたあとに、白熱したスポーツの試合を観終わったときのような、さわやかな感動を残した。

 

本のなかで、著者が自ら営業にかけまわって、一件でも多くの注文をとろうと奮闘する様子が描かれている場面があるのだが、その場面を読んでいるときは、思わず目頭が熱くなった。

 

その様子は、けしてかっこいいと表現できるものではなく、むしろ、かっこわるく、どこまでも泥臭い…。

 

しかし、起業の本質というのは、むしろそういうところにあるのではないかとおもう。すくなくとも、ぼくはそう感じている。この本は、起業という行為がなんであるかを、あらためてぼくに理解させてくれた。

 

近年なかなか出会えなかった格別な良書だったとおもう。ふだんは本を流し読みして、二度読むことはまずないが、この本は二度読んだ。そして、二度目は内容がより深くはいってきて、なんどか胸が熱くなった。

 

起業や商売に関係ない人でも、この本からは生き方や人生をまなぶことができるとおもう。

 

いま目の前の壁をこわして前に進もうとしているすべての人に、ぜひおすすめしたい一冊だ。