向田邦子の「無名仮名人名簿」を読んで感じたこと

和のテクスチャ

正月になにか本を読もうと思って考えをめぐらせていたら、向田邦子のエッセイを読んでみたいという気持ちになった。そしてみつけたのが、「無名仮名人名簿 」という本。

20代のときに向田邦子の小説とエッセイを読んだ。だが、それも1冊か2冊だけだったので、あまり深く記憶にのこってはいなかった。だだ、作品を読んだ印象として、独特の観察眼をもったひとだとは思っていた。今回あらためて向田邦子のエッセイをを読んでみて、なぜ向田作品は面白いのかがよくわかったような気がする。おそらく、いろんな評論でいわれていることだとは思けれど、向田作品が人々をひきつけるのは、作品が<毒>を含んでいるからだろうと思う。

香水には、ほんのわずかに人が嫌う香りが混ぜられているという。向田作品の特徴といえる毒は、香水のなかにいれられる特殊なエッセンスのような魔性性をもっているのである。独特のアイロニーといえばいいのか、そんなものが向田邦子が書いた文章に内在していて、それが読者をひきつける。

わたしも向田マジックにすっかりハマってしまい、魅了されるまま、どんどん読みすすめてしまった。向田作品を読んでなにを感じるかは人それぞれだろうけれど、わたしの場合は、生きていくうえにおいても、ある程度は、自分のなかに毒をもっておくほうがいいだろう、という認識を再確認したような気がする。