母子

平日の昼にレストランで食事をしていたら、あとから若い母親と高校生くらいの娘がはいってきて、正面のテーブルに座った。見た目はどこにでもいそうな普通の母親と娘である。

席に座るなり、娘は不機嫌そうな態度で母親になにかぶつぶつ文句を言いはじめた。なにもいわずに黙っているおとなしそうな母親に、なにかに苛立ったように言葉をぶつける娘。平和な昼時のレストランに不穏な空気がただよう。

せっかく美味しいものを食べに来ているのに、妙な場面に出くわしてしまったと、わたしは心のなかでつぶやく。

注文を終えた母子は、下を向いてそれぞれの携帯画面をみつめている。会話は一言もない。

しばらくたって、母子が注文した料理が席にはこばれると、真向いに座っていた、さっきまで不機嫌のかたまりだった娘の顔がほころんで無邪気にあんかけ焼きそばを食べはじめた。そして普通の親子の会話がはじまった。

わたしはほっと胸をなでおろし、やれやれと思いながら束の間その様子をながめたあと席をたった。なんのことはない、母親と娘は、見た目どおりの、どこにでもいる、”ふつう”の親子だったのである。