ブランド戦略におけるコンテクストの重要性について考えてみた

企業や個人のブランド戦略において、コンテンツよりもコンテクストが重要になってきているといわれています。

ブランドとコンテクストは切っても切り離せない関係といえます。ブランドづくりに成功している企業や個人は、みな例外なくコンテクストをもっているからです。でもコンテクストとは、いったいどのように理解すればいいのでしょうか。

ここでは、コンテクストとは何か、またブランド構築にコンテクストがどのようにかかわっているのかを考えてみたいとおもいます。

そもそもコンテクストってなに?

コンテクストという言葉は、ビジネスにおいては「文脈」や「背景」というような意味で使われ、人によってはコンテクストではなく「コンテキスト」と発音します。

語源である英語の「context」をロングマン英英辞典で調べてみると、次のように説明されています。

the situation, events, or information that are related to something and that help you to understand it

(特定の対象を理解するのに役立つ状況・出来事・情報)

わかりやすくいえば、特定の企業や個人がもつ印象、ないしはイメージといった意味になるかとおもいます。なので、意味合いとしては、かぎりなくブランドという言葉に近い言葉だといえるでしょう。

ただし、若干ニュアンスの違いもあります。ブランドは、ブランドイメージという言葉があるように、そのときどきの企業や個人のイメージをあらわす言葉として使われます。

いっぽうコンテクストは、現在のブランドイメージの前後左右も含めた、広い意味合いで使われる言葉です。

ぼくは、コンテクストとは、企業や個人が過去・現在・未来にわたって連綿と形成していくストーリーのことだと理解しています。

コンテクストの重要性とは?

ビジネスにおいてブランドという概念が定着しはじめたころから、コンテンツよりもコンテクストが重要だなんていうことがいわれはじめました。

この場合のコンテンツというのは、企業でいえば商品やサービスのこと。コンテクストは大衆が企業に対して抱いているイメージのことです。

つまり、コンテンツよりもコンテクストが重要というのは、「どんなモノ」を売っているのかよりも、「どんな人」が売っているかが重要であることを意味します。

市場が成熟してくると、商品やサービスの中身だけでは差別化がしずらくなっくるので、コンテクスト、すなわち売り手のストーリーが重要になってくるわけです。

コンテクストがしっかりしている企業は、価格競争のスパイラルに巻き込まれにくく、ユーザーが妥当とみとめる範囲内で自由な価格設定をおこなうことができます。

また、自社のブランドが強固なコンテクストの土台のうえに乗っかっている企業は、ブランド価値を十分に発揮することができ、その価値を価格に上乗せできます。

そのため、かりに高い価格設定をしても、消費者はその企業から商品を購入します。

コンテクストと消費行動の関係は?

コンテクストを理解するのには、自分の消費行動を振り返ってみるのが手っ取り早い方法です。

たとえば、ぼくは無印良品が好きですが、なぜ好きなのかをよくよく考えてみると、たんに商品が優れているからではないことに気がつきます。

値段だけで選ぶなら、無印よりも安価なニトリという選択肢もありますが、ぼくがニトリで買い物をすることはめったにありません。

ぼくにとっては、ニトリよりも無印のほうが、コンテクストといえるストーリーが感じられるからです。ちなみに、これはどちらのブランドが優れているか、という単純な発想ではありません。

多くの人が無印から受け取るコンテクストは、わかりやすいところだと、「ミニマル」や「北欧スタイル」などがあげられるでしょう。

人によっては「ロハス」や「共生」、「丁寧な暮らし」とったコンテクストを受け取っているかもしれませんね。

こうしたコンテクストは、企業が消費者に向けて周到に用意した「メッセージ」である場合もあるでしょうし、意図せずメッセージとなってしまう場合もあるでしょう。

いずれにしても、コンテクストの重要性を考えるのなら、企業や個人はどのような「メッセージ」を顧客に向けて発信していくかを考え抜かなければなりません。

大衆にもとめられるコンテクストは時代によって変わる

大衆にもとめられるコンテクストは時代によって変わります。

無印良品がミニマリストとよばれる人たちから支持されているのは、おそらく、今という時代が「シンプル」や「ミニマル」という価値観にすくなからず傾いているからでしょう。

ただし、将来、時代がもとめる価値観が変われば、企業のコンテクストもそれに合わせるように、おのずと変わっていくはずです。

たとえば近い将来、環境問題がわたしたちの生活を実際に脅かしはじめたとき、環境保護に貢献する企業が市場で優位に立つかもしれません。

欧米では「グリーンコンシューマー」という環境意識の高い消費者がいて、企業も彼らをまったく無視できない状況になっています。

コンテクスはどのように形成されるのか?

コンテクストを形成する要素にはさまざまな要素があります。企業理念などは、その最たるものでしょう。

ブランドのネーミング、商品やサービスの内容はもちろん、ホームページのデザインからツイッターのメッセージまで、あらゆるものがコンテクストを形成していきます。

こまかくみれば、商品のポップやホームページのフォントなども、すべてコンテクストを形成する要素のひとつです。言いふるされた表現を用いれば、神は細部に宿るという表現がピッタリきます。

近年、コンテクストを形成する要素としてとくに注目されているのは、体験的価値です。

体験的価値とは、お客さんが商品を購入するお店の雰囲気や空間自体もそうですし、お客さんがある目的を達成するために、場所や機会を提供することも、体験的価値を提供することになります。

無印良品を例にあげると、まず店舗に入ったときに感じるフレグランスの香りであったり、店舗で流れている民族的なBGMなどが、総合的に消費者が受け取るコンテクストを形成していく要素となります。

また、手仕事やDIYなどの参加型ワークショップをひらくことなども、体験的価値を提供することになります。

コンテクストは一日にしてならず

コンテクストを形成する行為は、基本的に、商品開発などよりもずっと時間がかかることです。「コンテンツよりもコンテクスト」が重要という言葉には、そういう意味もふくまれているのだとおもいます。

ですが、コンテクストはいったん構築されれば、企業にとっても個人にとっても、ビジネスをおこなううえで非常に強力な武器になります。

だれでもネットというツールが使える今は、個人レベルでも自らのコンテクストを情報として発信することが容易となりました。

メッセージに共感してくれた潜在顧客に向けては、ビジネスの核心となる、さらなるメッセージを送ることも可能です。

ただし、コンテクストという、ビジネスをするうえで重要な文脈をつくるのには、長期的な視点が必要となるため、それこそ小さな努力を積み重ねていくようなイメージをもつことが重要ではないでしょうか。